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結婚番外編_Soujiro Birthday21



帰ったらなんて言おうか。
そう思いながら美作さんのビルを出ると、そこには総二郎と類がいた。
類はスリーピーススーツ姿なのに対して、総二郎は、カジュアルな普段着。



なんで?
頭に疑問符が浮かぶあたしに、類が小さく首を傾げる。



「司はまだ上?」
こくんと頷けば、「俺、行くよ。」
隣に立つ総二郎にそう告げ、あたしにはまたね、と小さく笑ってビルの中に消えてゆく。



「帰るぞ。」
なんとなしにあたしが類の背中を見送ってると、くるりと総二郎が背を向ける。
あたしは慌ててその横に並ぶ。



「帰るって…」
あたしの問いは愚問とばかりに、ちらと顔を動かしてこちらを見る。
「ほら、乗れ。」



そこに待っていたのは、西門のリムジンだった。
ドアを開けてもらい、先に乗り込むと、後から総二郎が隣に座る。



「美作さん?」
きっと連絡がいったのだろうと当たりをつければ、あっさりと否定される。
「いや、お前が帰るって電話くれたろ?だから、迎えに来た。」
「ん?なら類はなんでいたの?」
「お前から連絡来た時、類といたんだよ。」
はぁ、こんな平日の昼間から…?あの格好ってことは、類は仕事だったんじゃないの?
ん!?今日って、お稽古がある曜日だよねー?
「総、仕事は!?」
思わず声をあげれば、
「いーから。ちょっと、黙れ。」
そう窘められ、そのままぎゅうと抱きしめられた。



ほんの僅かだけれど、総から爽やかだけどほんのり甘さを感じる女性らしい香りがした。



あ、これ…



思わず首を上げ、総を見れば、
「分かる?お前の香り。俺には、お前がこんな風に感じるんだ。とりあえず今時点では、これが完成品。」
あたしがすんすんと再び総の首筋に鼻を寄せて香りを嗅げば、総二郎がくすぐったそうに笑う。
しばらくされるがままでいて、それから俺も嗅がせろ、と抱き込んだあたしの顔に鼻を寄せる。



「やだ、あたしはなんも付けてないって!」
手で跳ね除けようとして、失敗する。



「すんだよ。俺には、つくしの香りが…これがないと落ち着かないんだよ。」
冗談とも本気とも取れないしみじみとした声音だった。



ーー 想いに香りがあれば良いのに



そう思ったことを思い出す。



この三日間のことを正確に総二郎に話す自信がなかった。
そもそも道明寺と過ごした時間とあたし達の間に流れた時を言葉にすること自体が難しい。



さっき、総二郎はどう捉えたのだろうか。
離れがたい、名残を惜しむ気持ちを “迷い” と受け止めたかもしれない。
だから。
あたしが、総二郎をどれだけ好きかを香りで感じてもらえたらいいのに…
そんなことを思う。

 

あの時は総二郎の気持ちを知りたかった。
今は、知ってもらいたいと思う。



ほんの少し前のことなのに。
あんなことで気を揉んで、いもしない香りの持ち主にやきもちを焼いていたのがひどく平和に思えた。







いつもありがとうございます。
司との別れを書いたら、なんだか気持ちが一区切りしてしまいました。とはいえ、finまであと僅かですので、もう一息。
最後までお付き合い頂けたら本望です。
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