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結婚番外編_Soujiro Birthday06



予想もしていなかった道明寺からの電話に、混乱して…反射的に逃げてしまったことで気がついた。



私、後ろめたく思ってたんだ…
そうか…自分の中では終わったと思っていたけど…そうじゃなかったんだ。
まだあたしの中には、道明寺がいたんだ…



けれど、さっき目覚めて、頭を占めていたのは、総が連れて帰ってくる香りのこと。
道明寺のことよりも何よりも…総の顔を見た途端に一番に聞かずにはいられなかった。



ーー そういうことだ。



今のあたしの中の優先順位は、考えるまでもなく総一択だ。
それだけ濃密な時間をこの人と過ごしてきた。
この人はあたしが道明寺を忘れられずに踠(もが)いてた時からずっと寄り添って…あたしを見守ってくれた。
 


道明寺の何故?に答えようとするから迷うんだ。



道明寺を待たなかった理由ではなくて。
総を選んだ理由がある。



道明寺が好きで好きで…忘れられたくせに、何年も諦められずに想い続けたあたしにも。
類に惹かれながら、類を好きになる勇気が持てなかったあたしにも。
総二郎の気持ちに気付かないままに、契約結婚を受け入れた打算的なあたしにも。



総二郎は、否定も非難もせず、それでいいんだと受け止めて、一つ一つ丁寧にあたしに向き合ってくれた。



あたしは好きな人がいるのに他の人と結婚するような女だったのだから、不幸になって当然なのに。
そうならないように、生じた不安にはどうすればいいのかを一緒に考えた上で、西門の家に馴染めるようにと支えてくれ、何かあれは共に戦ってやると一番近くで見守ってくれた。



そしていつだってお前はそのままでいいんだと、あたしを容認してくれた。
あたし達には、そうやって二人で積み重ねた沢山の想いと…時間がある。

 

「ねぇ、総。
あたし、会いたい。道明寺に。」



総二郎が溜息をつく。まるで、あたしが言い出すことなど分かっていたとばかりに。



「あたし達、話さないといけないんだよ。」
逃げてちゃ、いけない。
道明寺が納得いかないと言うのは、当然だ。あたし達はちゃんと終わってない。それであたしも苦しんだ。
一方的に終わりになった恋に、あたしはずっと囚われた。




****




あたしから会いたいと連絡をすれば、彼はいちにもなく体を空けてくれた。
指定されたのはメイプルの一室だった。あたしは懐かしく思い出す。
だってそこはあたし達の数少ない思い出の場所のひとつだから。
ああ、本当に思い出したんだ、と嬉しくなった。



教えられた部屋番号の扉の横にある呼び鈴を鳴らすと、中からスーツ姿の道明寺が現れた。
扉を押さえ、中に入るようあたしを促す仕草はスマートだ。そうだ、昔からマナーは良かった。
そのまま奥のリビングスペースまでエスコートしてくれた。



長い足を持て余すようにソファーに座る道明寺を見て、相変わらず綺麗な男だと感心する。
十代の時よりもがっしりした体つきはひどく男っぽい。癖の強い髪を後ろになでつけ、秀でた額の下の眼光は鋭くて知的で…大人の色気があった。
それがあたしが知るあの頃の道明寺とは違うんだと思い知らされる。



何から話せばいいのか。
お互いに、言葉が出なかった。



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