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あなたがいれば_13



「あなた、もう少し何とかならないのかしら?」
「…」
「家庭教師の意味はご存知?まさか仲良くするためにいると思ってたのかしら?お陰でどの教師もあなたの人物評価については好意的だわ。」



目の前の人がトントン、と机の上に置かれた書類を指で叩く。
ひどく威圧的に感じるのは、立ち位置のせいか?
あたしはこの人の部屋に呼ばれて、叱られる小学生みたく執務机の前に立たされていた。
そして家庭教師から受けた学習進捗報告が期待以下だと遠回し?に嫌味を言われてる。



って言うか、暇つぶしのために家庭教師つけてくれたんだと勘違いしちゃったよ。
確かに先生達と仲良くなって楽しく過ごしちゃったわよ。
まさか習熟レベルを確認されてたなんて…そういうのあるなら、事前に言っといて欲しかったわよ。
抜き打ちってひどくない!?大体ゴールはどこだっつうの。聞いてないし知らないっつーの!



「あの!お言葉ですが、たかが一ヶ月や二ヶ月でそんな全部出来るようになるわけないじゃないですか。」
反論した途端、表情を全く変えることなく、あたしに命じる。
「分かりました。ならあなた、こちらに残って今の言葉を証明して頂戴?」
「は?」
意味が分からなくて、反射的にあたしの口から出た言葉を、容赦なく叩き潰す勢いで通達される。
それもトントン、と相変わらず威圧感満載で人差し指で机を叩きながら。
「相変わらず頭の悪い人ね。時間があれば習得できるのでしょう?
この大学、英徳と提携しているの。単位もそのまま引き継げるから、9月からはそこに通いなさい。」
そう言って、立ち上がると机を周り、あたしの横まで来て書類を手渡す。



は?はぁ?はぁーーっ!?



なんだそれ。
反射的に書類、受けとっちゃったし。
それに目を落とせば、一面英語。あたしの名前があるし。は?もしやこれ入学許可書?
次をめくれば留学生オリエンテーションの案内に大学紹介パンフレットまでついてる。意外と親切?
いやいやいや、あたしここに残るの?いきなり留学?はぁ?なんでよ?どういうこと?



頭の中は、疑問符ばかりがグルグル回る。



「家庭教師のMs.フィルチを手続きのサポートにつけます。詳しくは彼女から話を聞いて頂戴。」



留学が決定事項としてダメ押しされる。
あ、ら?
ちょっとは近づいただなんて勝手に親近感抱いちゃってだけど、全然じゃん。
お母さん、なんて満更でもなく呼んでた自分の頭をはたいてやりたい。
何の嫌がらせかいっ!



「ああ、あなたのご両親にもお話して、継続して我が家でお預かりすることも、留学の件も承諾して頂きました。
とても喜んでおられたわ。くれぐれもよろしくっておっしゃって。
ただ、あなたが家計の一部を支えていたと聞いてましたので、ご不便もおありかと思い、うちで援助させて頂くお約束をしました。」



あざ笑うかの様な口調に、カァーっと頭に血がのぼる。
パパ!ママ!勝手になんでこんな話受けるのよ!
馬鹿馬鹿馬鹿!!!!最低!娘を売るのか!と心の中で罵倒する。



「結構です!あたしが働いて仕送りします!」
力いっぱい叫べば、
「あら?ご存知ないのかしら?働くと言っても、学生ビザじゃ、この国では制限があるのよ?
おまけに、学業も大変よ?あなた、英会話もまだ完全ではないのよね?それなのにそんな余裕があるのかしら?」
そう浅慮さを指摘され、あたしのささやかなプライドはあっさりと打ち砕かれる。



ぎゃふん。
知らなかった。そうなの?留学生は自由に働けないの?
ってか、働いて仕送りとか、留学前提じゃん!
いいの?いいのかあたしー?



けど、頭に浮かんだのは、嬉しそうに笑うヤツの顔だった。
あと少しでお前はいなくなっちまうんだな、と昨夜も大きな背中をあたしに向けてしょぼくれてため息をつく姿が愛しくて。寂しがってくれるのが嬉しくて。あたしだって寂しいよ。お互い頑張ろうよ、なんてあたしもちょっと涙目になりながら、二人でくっついて過ごした。
もうお互いの温もりがないと、きっと寂しくていられないほどにあたし達は馴染んでしまった。



だから。あたしがこっちの大学に通うと言えば、きっとものすごく喜んでくれるに違いなくて。



あたしだって、道明寺と離れないですむ方法があるなら…そこまで考えて、上目遣いでこっそり目の前の人を見れば、澄ました顔ですたすたと机に戻るところだった。



ちくしょう。また魔女って呼んでやる。



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コメント

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Re: タイトルなし

悠*さま

こんにちは。
コメントありがとうございます。

こちらの魔女は中々腹黒ですよ。(笑)
まあ、仕事してれば気も強くなりますし、財閥の総帥代行なんてしてたら鋼の心臓が必要なんでしょうねー。

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