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10万回_02(CP類つく)



寂しい…とも違うんだ。
類が働き出す前は、もっと一緒にいられた。
ううん、いつも一緒だった。



学校でも、非常階段でも、中庭のベンチでも。
いつも隣にいたのは類だった。
バイト先を出ると、ガードレールに身体を預ける類がいた。
「お疲れさま。」って笑ってアパートまで送ってくれた。



それが当たり前ではなかったと知った時、あたしはやっと類への恋心に気がついた。
優紀には鈍すぎると呆れられ、F2にはとっくに付き合ってるのかと思っていたと茫然とされた。



あの時間はもう戻らない。
相変わらず隣にいるのは類だけど、社会人となった類はあの時みたく時間に余裕がないから。
なんてもったいないことをしてしまったのかと項垂れる。
もっと早くにこの気持ちに気がつけば良かった。
そうしたら、もっと違った二人の時間を過ごせたかもしれないのに。



外に出れば、昼間の熱気は少し収まり、けれどまだまとわりつくような暑さの中、とぼとぼと駅までの道を歩く。



「牧野!」



後ろから声がして…まさかと振り返ると、類があたしを目がけて一目散に駆け寄って来るところだった。



「ごめん。」と口では謝りながらも、「でも来たら起こしてって言ったのに。何も告げずに帰るなんてヒドイ。」とあたしに怒るから、「疲れてると思ったから。」
それだけ言うのが精一杯で思わず俯く。



「泊まって行くでしょ?」
空気が変わり、ふわん、といつもみたく優しく胸に引き寄せられる。



普段は静かな心の臓がドクドクと音を立てて拍動し、少し汗ばんだ肌をシャツ越しに感じる。



ーー走って来てくれた。
それが嬉しくって、思わず類のシャツを掴む。



「牧野が嫌がることはしないから。ね?」
泊まって行ってよ、と今度は耳元で甘く囁かれて。
あたしは赤面しながら、こくんと頷く。



「このままご飯、食べに行こうか。何がいい?」
類が満足そうに微笑むと、あたしに手を伸ばすからあたしも手を伸ばす。
そして指先で手を繋ぐと、ゆっくりと歩き出す。



夏は暑いから、指先だけで手を繋ぐのだと知ったのは、類と付き合ってからだ。
それまで、夏に手を繋いで外を歩くようなことをした事がなかったから。
あたしの恋愛スキルは高校生の時から上がっていない。もちろん経験値も。
だから、あたしは類への気持ちを認識しながらも、持て余すときもある。今日みたいに。
そんな時、類はすぐに気がついて掬い上げてくれる。



「今日、俺何も食べてない。牧野と食べようと思って待ってたのに。」
まるで、あたしのせいだとばかりの言いように、あたしは口を尖らす。



類が起きなかったんじゃん。
あたしだって類と過ごす時間を楽しみにしてたのに。
だけど疲れてるから可哀想だと思ったんだ。だから寝顔を眺めて満足してたのに。
おまけに、類のせいで使用人さんに可哀想にって目で見られた気がして、悲しくなったのに…



口には出さなかったけど、類にはダダ漏れだったらしい。
「牧野に会えないまま1日が終わる方が、俺には可哀想なんだ。」
彼女なんだから覚えといてよ、なんてさらっと言われて、恥ずかしいけど嬉しくて。
落ちた気持ちはあっという間に浮上する。



そうだ、と足を止め、あたしを振り返る。
「うちに決めたんだって?」
頷くと、ありがと…とウッカリ聞き逃してしまいそうなほど小さな声で礼を言われる。
「嬉しいよ。ずっと一緒だね。」そう呟かれて。
あの時のことを謝らなければと急いで口を開く。



「あたし、ごめんなさい。あの時、嫌な言い方した。」



あたしの謝罪の言葉に、まるで花が咲くように笑った。
あたしはその麗容に頬を染める。
まだ完全に陽が落ちる前の薄墨色の空の下、早々と点いた街灯は、私を見てとばかりに空に向かって光を放っていた。その下に立つ優美な姿に、やっぱりこの人は桜の精みたいに綺麗だと思う。



類の胸に抱き締められる。腕があたしの腰にまわり、類の顔があたしのすぐ近くに来て。昼間光に透けて綺麗だと見惚れた茶色の髪が、あたしの髪に重なる。



この人がいいよ、と笑ってくれるから。
あたしもまた笑えるようになる。
だってここは、世界で一番安心できる場所だから。



いつもありがとうございます。
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コメント

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Re: タイトルなし

悠*さま

おはようございます。

橋?寝てませんよー?いったいどこでそんな妄想を?(笑)
平和な日本でかつ特に危険案件抱えてない類は一人歩きOKなんです。

ハンドル、お気遣いありがとうございます。
コメントもありがとうございました!

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