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破鏡重円_23



首を左右に傾けてから、椅子の背もたれに身体を預ける。



類の秘書のことを調べさせた調査レポートに再び目をやる。
容姿に似合わない凄い経歴だった。単なるかわい子ちゃんじゃなかったことが、逆に俺を憂鬱にさせる。



類の言う通り、彼女は牧野が家を出てすぐに花沢を退社してる。
まだ類の周りをウロウロしてるようならと思ったが、杞憂だったようだ。
今はパリ郊外の姉の家で過ごしているとレポートの最後は締めくくられていた。



パリに来てからの類の獅子奮迅の活躍には目を見張るものがあり、周囲の類に対する期待値も上がっていた。
元々低かったわけじゃない。高かったものが、更に高くなるには偶因が必要だ。



きっと彼女と組んで仕事が楽しくなっちまったんだろうな、と俺は類の気持ちを想像する。



俺は秘書と直属部下は分けている。
秘書の負担もでかいから、スケジュール管理をメインに、それに付随する業務を任せるが、具体的な案件にまでは深くは入らせない。



しかし、類のとこも司のとこも、秘書の業務はスケジュール管理に留まらず、むしろ秘書は全てを把握し牽引する片腕的な存在だ。
それはきっと二人の性格に合ってるのだろう。



優秀な部下がいると、仕事の進度はむろん、質が上がる。
そしてもっともっとと、高みを目指したくなる。
こいつとなら行けると期待が更に後押しし、一つ上手く行けば、次はそれ以上を求めたくなる。
それは俺にも理解出来る感覚だった。



結果として、今までになくワーカホリックになったんだろう。



彼女、美作で欲しいな、と思う。
ヘッドハンティングしてみるか?
類が怒るか?牧野の方は?色々思いを巡らす。野放しにするよりいい気もする。



欧州エリアの責任者になってまもなく三年になる。
何か特異な事情がなければ、そろそろ任期が切れて異動だ。
同じタイミングでトップが変わるのが東南アジア、中東、北米。次はきっとこのどこかだ。
その時に備えて、声を掛けてみるかとチラと考える。



同時に、類の様子を思い出していた。
あの周囲を気にしない性格は、司ほどでなくとも自信家に見える。
穏やかで落ち着いた性格の癖に、意外と好戦的な面もあり、特にビジネスではその色が濃く出る。
仕事で知り合った人間は、類のプライベートとのギャップに驚くのが通例だった。



この前は、落ち込み方が酷かった。
ありゃ、しばらく元通りとはいかないだろう。
敏腕秘書は放逐され、残る社長も抜け殻じゃあな。
いずれ事業にも影響出んじゃねーの?



類の親父さんに要注意だと言っとくか?
それもチクるみたいでスッキリしない。



そんなことをつらつらと考え。
とりあえず欧州花沢と連携している部署には、気をつけるように耳打ちしておこう、と決めて。
時計を見てから、この後のスケジュールが全て社内のもので、至急案件でないことを確認してから、執務室を出る。



「牧野のとこ行ってくる。」
待機していた秘書にそう声をかけて、会社を出た。



ーーーーーーーーーー


▼ピンク拍手には御礼小話があります。09の小話の続きです。
side類のお話には不釣り合いかと時期を見ていたら、随分空いてしまいました。すみません。
今のお話〈破鏡重円〉とは直接関連しませんが、もし宜しければ、読んでください。



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コメント

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Re: No title

ほ**さま

お疲れさまです。

ですね、類のターンです!
頑張ってもらわないとですね。

コメントありがとうございました。

Re: タイトルなし

さ**さま

はじめまして。コメントありがとうございます!

おっしゃるとおり、既婚者である類を好きになり、告白までした秘書それだけで罪深いですよね。

もともと彼女にとって、類とつくしの間に入る余地があるとは思っておらず、だからこそ秘書として類のために頑張ってきたのに、仕事上で何かあったわけでもないのに外されて。

気持ちが収まらず、わざわざすぐにバレる嘘をついてみたものの、まさか二人が会話もないほどに溝ができてるとは思っておらずに、自分のした事でつくしの家出を引き起こしてしまい、本人も驚愕の事態だと後悔してます。

ましてや、子供のいる家庭に行けば、きっと彼女には違う気づきもあるのではないかと。

そうですね、被害は既に子供にまで及んでますね。
このことは、親として真摯に受け止めてほしいですね。

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