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記事一覧

魔法を解いて番外編_記憶11

「司、総さん…たくちゃんのお母様がいらっしゃったけど…」当惑した様子でつくしさんが僕達を呼びに来る。母様が…?この家に…?初めての出来事に驚きを通り越し、俄かには信じられなかった。父さんと総さんも同じだったようで、二人が思わずのように顔を見合わせていた。「今客間でお待ち頂いてるんだけどね…私とたくちゃんを訪ねて来られたの。」チラと僕を見て、言いにくそうにそう続けた。総さんが立ち上がる。「俺が同席する。...

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魔法を解いて番外編_記憶10

なんだよ、と父さんへの不満が身のうちに湧く。僕は母様と三人で暮らしたいんだ。もうつくしさんを好きじゃないって、そう母様に言えばいいのに。それで母様が幸せになれるなら、いいじゃないか。例えもしそれが本心じゃなくたって。どうせつくしさんはもう総さんのものなのだから。「もう一つ、まだつくしが好きか、の問いは、YESだ。だけど、女として見てるとかでなくて、俺の一番奥に、つくしがいるってことだ。それくらい、特...

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魔法を解いて番外編_記憶09

あまりにも労るようにやんわりと言われて、思わず腕で顔を覆う。「…母様が…」また涙がこみ上げて来た。そのまましゃがみ込む。こらえ切れなかった分だけ、少しだけ嗚咽が漏れた。懸命に呼吸を整える。「別れたいって言うから、離婚することにした。限界だっつうからよ。仕方ないだろ…?」父さんが説明する声が聞こえた。「俺から話すつもりだったんだ。けどコイツが帰ってくんのおせーから。俺が外してるうちに母親から話聞いて、...

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魔法を解いて番外編_記憶08

駄々っ子みたいに泣いて、怒って、大声で叫び出したい気分だった。「父さんは、母様の気持ちを考えたことがあるの?こんな風いつだって母様を除け者にして、僕らだけがこの家で楽しく過ごしてた。父さんは、酷い人だよ。僕は見損なった。」そんなことを容認していた父さんのことが許せなかった。僕の憤懣やるかたない想いの根っこはそこだった。だって、どう考えてもひどいじゃないか。母様が可哀想だ。「たくちゃんは誤解してる。...

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魔法を解いて番外編_記憶07

「謝れ。」父さんの声が真っ直ぐに僕に突き刺さる。今まで、こんな風に腹が立つことなど全くなかったのに、さっきからずっと僕はアンコントロールだ。だけどそれにしても、今のは完全に僕が悪い。無抵抗の女性に暴力だなんて、無遠慮にすぐに力でねじ伏せようとする悪ガキと同じに低俗で卑劣だ。 「司、いいよ。」つくしさんが立ち上がると、僕の前に立つ。ほんのり頬が赤くなってはいるが、明らかな傷はついていなかった。想像よ...

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魔法を解いて番外編_記憶06

すぐに母屋の方から足音が近いてくるのが聞こえた。この邸でそんな歩き方をしたら、家元に怒られるのに、と思うと同時に父さんが入って来た。硬く強張った形相に、思わずつくしさんを掴んでいた手に力が入る。「いたっ。」微かに漏れた声に、父さんの視線がこちらに向き、あっと言う間もなく、つくしさんを僕から引き離す。一旦萎みかけた気持ちが父さんを前にしてまた膨らみ始めた。そんな必死な顔して誰に会いに来たのか、と燻っ...

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魔法を解いて番外編_記憶05

僕を押し戻しながら、つくしさんが体勢を整える。大きな黒い瞳が僕を覗き込むように近づいた。この人の目力は強い。僕は思わずつくしさんを揺すぶっていた腕を止めた。「たくちゃん。私たちが付き合ってたのは、本当だよ。だけどずっと前、私が総さんと付き合う前の話だよ。誰に聞いてくれてくれてもいい。嘘じゃない。見てたら分かるでしょう?司も私も今の家族を一番に大切にしてる。」嘘を言ってるわけではないのは分かってた。...

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魔法を解いて番外編_記憶04

僕が暮らす国は、離婚はそう珍しくない。離婚大国と呼ばれた時代はすでに過去となり、離婚率はいっときより下がってはいるものの、それでも今も身近でたまに耳にする。だから僕も友人の親が離婚した、と聞いても大変だな、と思う程度だった。身内で言うなら類さんだって離婚している。だけど自分の身に降りかかるだなんて、これっぽっちも思っていなかった。日本に来る前の晩も三人で話した。全くもって我が家は平和だと思っていた...

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魔法を解いて番外編_記憶03

一瞬、母様が動きを止めた。言いづらいことなのか?と僕は母様の言葉を待つ。早く向こうに戻りたかった。先に行ってしまって構わないよ、と言っておいたけど、きっと皆が僕を待ってる。「昨日、お父様とお話してね、お母様、家を出ることにしたの。」ようやく放たれたそれを聞いて、一瞬、言葉の意味が分からなかった。「もうお父様とは一緒にいられないの。」家を出る?一緒にいられない?一体どういうこと?僕の戸惑いを置いてき...

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魔法を解いて番外編_記憶02

その年も、私はいつものように長い休みを過ごすために日本に来ていた。いつも母は留守番だった。けれど、少し前に祖父 ー母にとっての父親ー が亡くなったこともあり、諸々の手続きがあるとのことで、今回は私と共に日本に来ていた。 母から離別を告げられた日は、とても暑い一日だった。日本の夏は、例年各地で高温を記録していたが、間違いなくあの年も猛暑で、特に私がいた東京は、真夏日(最高気温30℃以上)が続いていた。屋敷...

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