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記事一覧

01_はじまりの呪文

〈はじまり:物事の起こり〉「いらっしゃいませ。お待ちあわせでしたか?」邸にいるのも気詰まりで、気分転換に行きつけのbarに行くと、店に入るなりスタッフにそう声をかけられる。あちらでお待ちですよ。と示された方に近づけば、夜景がよく見えるようにと窓側に設置された2人がけのソファー席に、牧野がいた。「よ。つくしちゃんひとり?」ぼんやりと窓の外を眺める牧野に声を掛けると、驚いたのか弾かれるように振り返り、...

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02_おしまいの呪文

〈おしまい:終わること/物事がだめになること〉ポン!とスマホが小さく軽やかに鳴り、メッセージが届いたことを知らせる。会社出たのかな?調理の手を止め、シンクで軽く手をゆすぎ、タオルで手を拭いてからスマホを手に取る。画面ロックを外すと、すぐに目に入る司からのメッセージ。『悪い、今日行けなくなった。これからニューヨークに飛ぶ。』あたしは力が抜けて、思わず床に座りこんでしまった。分かってる、司が悪いんじゃ...

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03_露顕の呪文

〈露顕:隠していたことが表に現れること〉俺を避けるように窓の外を見つめる牧野は、身も心もすり減らしているように見えた。三年前。司が閨閥結婚すると聞いて、余計なお世話ながら、俺たちは心配した。高校生の頃から強く惹かれ合っていたふたりの行く末を。司の縁談がいよいよ避けられないものとなった時、司と牧野は別れる努力をし、結婚が正式なものになってすぐに別れを選んだはずだった。どんなやり取りがあったか、詳細は...

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04_覚醒の呪文

〈覚醒:過ちや迷いに気づくこと〉西門さんの言葉に、泣くまいと懸命に踏ん張ってた気持ちが崩れた。ポロリと涙が溢(こぼ)れた。西門さんを盗み見すると、そんなあたしを黙って見てた。女に泣かれるなんて日常茶飯事だから、なんてことないのかと思い当たり。我慢する必要が無い気がして、おしぼりを目に当て、声を押し殺して泣いた。西門さんの言葉は正しい。無理しないで、やめたっていいんだ。自分で選んだ道だから、貫かなけ...

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05_発動の呪文

〈発動:動き始めること〉伸るか反るか。一緒に逃げようと言ってみたものの、牧野が乗ってくるのかは分からず、賭けみたいなもんだった。どちらにせよ、この状態の牧野をひとりにする選択はなかった。こいつが司との別れを選ぶのならば、俺は手助けをしてやりたかった。それが、あいつらが今の関係に足を踏み込んだ時に何もしなかった自分の役割に思えた。「手を繋いで一緒に眠って欲しい」らしくない、驚くような願いを口にした牧...

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