FC2ブログ

記事一覧

傾聴屋_09

逃げられる。何故かそんな思いが頭をよぎり、腕を伸ばし反射的に彼女の腕を掴む。しかし、穏やかな笑みは変わらなかった。初めて会ったときと同じく、その目には全てを受け入れるかのような、鷹揚な色が浮かぶ。「何故そう思われたのか、理由を尋ねても?私はどなかたに似ていらっしゃいますか?」仕方なく、言葉を続ける。「俺、10年前の…日本離れる間際の記憶が一部欠けてんだ。だから、もしかしてお前のことも知ってたんじゃな...

続きを読む

傾聴屋_08

俺は、あの女が気になってるらしい。都内で移動中、車窓ごしにハナを見つけた。銀座の片側三車線道路の大きな交差点を通り過ぎようとした時、人待ち顔で歩道に立つその姿を見つけ、息を飲む。平日の昼間、雑踏の中、ふと外を見たその一瞬に目に飛び込んで来た偶然に驚異を感じた。反射的に首を動かし、次第に遠くなる彼女を目で追う。すぐに向こうから鮮やかなブルーのランボルギーニ アヴェンタドールSロードスターが現れ、彼女...

続きを読む

傾聴屋_07

結局タマに押し切られる形になり、その夜も傾聴屋はやって来た。今日は珍しく淡い菫色のワンピース姿だった。「いつもと違うんだな?」一瞬何を言われたのか…と不思議そうに首を傾けるのに、指で服を示す。「いつもはパンツだ。」あぁ!と合点がいった顔をして、笑う。前にも思ったが、笑うと幼くなる。「本日は、こちらに伺う前に、別の予定がありまして。」「仕事か?」それにしちゃ、めかしこんでるなと思いながらも問えば、「...

続きを読む

傾聴屋_06

三回目。俺はこの部屋に女がいることに少し慣れた。拒否感はなく、やはり自分は牙が抜けちまったのかと、自分の変化に戸惑うようだった。「もしお嫌でなければ、少し体をほぐすマッサージをしましょうか。」「マッサージ?」女の初めての提案に思わずオウム返しする。「直接体を触られるのがお嫌でしたら、手袋を着用しますが?」「別にかまわねーよ。」反射的に答えていた。「では、まずは頭のマッサージを。昨夜のように質問があ...

続きを読む

傾聴屋_05

「学生時代には、もう少し内に衝動的なエネルギーがあったはずなんだが、なんというか、最近すげえ自分がスポイルされちまってる気がしてたまらないんだ。」「イライラしますか?」「そういうのとは違うな…そうだな、この前は心当たりがないと言ったが、お前が帰った後に思い出したことがあった。」俺の言葉に、女が促すように視線を寄越す。黒いデカイ目にじっと見られると、やはり不思議な感覚を覚える。俺は背をソファーに預け...

続きを読む

プロフィール

0004

Author:0004
はじめまして。
お立ち寄り頂きありがとうございます。

〈お願い事項〉
当サイト内の文章等の無断転載及び複製、他サイトへの無断引用等の行為はご遠慮ください。